
ぐねぐねしたフロントフォーク
まずピナレロと聞いて思いうかべるのは、前輪側のぐねぐねと湾曲したフロントフォークではないでしょうか?

それ以外は「全くわからない」という方も多いと思います。
時代はアメリカブランド全盛で、スペシャライズド、トレック、キャノンデールのBIG3がトレンドを作っていることは間違いありません。
いまハイエンドのロードバイクのプロモーションは「空力」「軽量」「太いタイヤ」
数値=性能というのは伝わりやすいのですが、個性がなくなっています。
シミュレーションソフトを使い、応力計算、空力計算をすると、どのメーカーも同じ形になるそうです。
でも皆さん趣味でロードバイクにのるのですから、もっと個性があっても楽しいですよね。
ピナレロのフレームは塗装を剥がしても一目でどのブランドか分かります。

この個性はどこからくるものなのでしょうか?
ピナレロの歴史にヒントがあります。
1952年にジョバンニ ピナレロが始めたブランドで、2025年現在73年の歴史があり、息子さんのファウスト ピナレロが引き継いで経営をおこなっています。アメリカのブランドが立ち上がった1970年代より20年歴史が深く、時代はスチールフレーム全盛でした。
スチールフレームの良さは、乗り手に合わせてフレームの長さ、角度をフルオーダーで作れることです。
同じパイプを使っても、ヒュンヒュン加速する「登り向け」にしたり、平坦でグングン伸びる「平地向け」にも自在に出来るのです。
私も初めてのロードバイクを購入したのが1993年、その翌年にはフルオーダーでクロモリフレームを作ったのですが、レース用を走るならこのジオメトリーでと訳も分からず作ったのですが、届いたものに乗ってみると加速はゆったりなのに40km/h以上になると路面に吸い付くように走る安定感に、これがフルオーダーで作る醍醐味なのかと感じました。
このフルオーダーのノウハウが生かされているのがピナレロのサイズ展開です。
何と11サイズあります。


現在の主流はXS,S,M,Ⅼ,XLの5 サイズあればOKというブランドが多い中でその倍はあります。
例えば身長170㎝の私は他社であればSサイズ1択となりますが、ピナレロだと「465」「485」「500」から選択できます。

筋肉量と柔軟性があればハンドルを低く出来る「465」
いま腰痛があるのでそこまでハンドルを低くしない「485」
サイクリング主体ならフレームが硬くなりすぎない大きめで「500」
こんな選択を考えます。
同じモデルを選んでもサイズが変われば、フレームの乗り味や自転車の上で行う自分の体の動きは実は変わっています。
あくまでもエンジンは「乗り手」であることが大切考えています。
もし試乗会などの機会に、同じモデルをサイズを替えて乗ると、微妙に乗り味の好みは分かると思います。
ピナレロは確かに高いのですが、サイズを増やすと高価とされる金型をたくさん用意しないといけないので、こういう面でコストに返ってくるのかもしれません。
ピナレロの歴代のモデル
フロントフォークに注目してご覧下さい。

昔のモデルはぐねっと曲がったベンドフォーク。
英語のJみたいな感じです。
これは路面からの衝撃をいなす工夫です。
現代のバイクは真っすぐなストレートフォークがスタンダードなのですが、加速の良さや俊敏性が高まるメリットがあるものの、
衝撃吸収性が犠牲になり、とくに下りのカーブで切れ込みすぎるので怖いのです。
乗り手の技術とタイヤの性能でカバーしてということなのですが、私は疲れるのでストレートフォークが苦手です。
その中間どころを狙ったのがピナレロオリジナルのぐねぐねフロントフォーク「ONDA」
ストレートフォークの中にベンドフォークのいなしを取り入れた革新的なデザインです。
過去のモデルを見てもTTバイクに一瞬ストレートフォークはありますが、ロードバイクはベンドフォーク→ONDAフォークへの移行しています。

最新のカーボンフレームになっても、スチールフレーム時代の歴史から受け継ぐアイデンティティが残っているのがピナレロです。
私がピナレロを知ったのは
私がロードバイクを始めたきっかけはツールドフランスをテレビで見たことです。
その時に5連覇をしていたスペインのミゲル インデュラインが乗っていたのがピナレロでした。

インデュラインはタイムトライアルが強く、そこでタイム差を稼いでいく姿が豪快で、その時に突如としてみたことがないTTバイクが登場するわけですが、それがこちら!

ピナレロ エスパーダ!
まぁとんでもないバイクが登場するのです。
これは屋内バイクでアワーレコードにチャレンジした時のものなので変速機はついていませんが、ほぼ同じ仕様でツールドフランスのタイムトライアルを走っていました。
ひと言でいうと「勝利への執念」見方によっては「奇才」かもしれません。
この時代のあと印象が残っているのが世界最強チーム「ファッサボルトロ」が使ったマグネシウムフレーム。
素材がスチール→アルミと進化して次にきたのがマグネシウムフレーム。
スチールとアルミの時代はコロンバスとデダチャイというイタリアの2社がリリースするパイプを各社で溶接して使うのが普通で、
違うブランドでも同じパイプで、ジオメトリーだけが違うので、ある意味乗り味としてはブランドとしての特別感はなかったのですが、このマグネシウムフレームの登場で一気に、自社だけの最新素材を使用する新時代に突入していきます。
その先陣を切って発表されたのがFシリーズのネーミングの最初のモデル。

このモデルを駆り2004年ジロデイタリアでアレッサンドロ ペタッキがスプリントで9勝を上げます。

アルミを遥かにしのぐ剛性をもったマグネシウムがどれだけ高い性能を誇っていたのかを、まさに勝利で示します。
フロントはONDAフォーク、リアシートステーも湾曲させて衝撃吸収を狙った形状になっています。
その後、時代はカーボンになりピナレロは日本の東レと組んで最新モデルをリリースしていきます。

このモデルがカーボン1作目、現行のモデルと見た目は大きく変わらなくて完成度の高さがうかがえます。
最先端のカーボン素材
時代はカーボンになり様々なブランドがあるのですが、ピナレロは日本の東レを使っています。


数字が大きくなるとより強いカーボンになります。
ピナレロはモデルが変わっても見た目が変わらないので、カーボンのグレードを見極めることが必要です。
T900使用 「F9」「F7」
T700使用 「F5」
T600使用 「X3」
などといったように分類されます。
ピナレロは素材を公表しているので、とても分かりやすいです。
他社ですと、ブリヂストンのRP9が東レT1100、RP8がT800,700MIXなど。
私が以前ブリヂストンを試乗した個人的印象では、RP9は自分には硬くて、RP8だと柔らかすぎる印象がありました。
ということは素材でいうとT900あたりがいいのかもと想像しています。
ブランドが違うので想像の範囲ですが、素材を公表してくれていると他社への乗り替え時や、自分の好みのを知識として蓄積していくことが出来ます。
これがスペシャライズドだとFACTカーボン
トレックだとOCLV
キャノンデールはハイモッド ノーマルモッド
といった感じで自社で名前をつけているので、中身が何なのか分かりません。
こんなところにもスチールフレームの時代に「コロンバス EL」のパイプが軽くて好きだとか、いや自分は重いけど粘りがあって乗りやすい「コロンバス SLX」がいいとか言っていた時代の良さを継承しているのかもしれません。
フラッグシップ「DOGMA」

最上級モデルに位置するのがドグマ。
PINARELLO のロゴではなく「DOGMA」
ドグマの意味を調べてみると、独断的な宗教や哲学と書かれていて、
ピナレロ ドグマはAIによると「勝利への執念」とされています。
他の何かと似ているものではない「究極」を意味するのでしょうか。
そんなドグマにだけ使用されるのが東レの世界最高レベルの素材。
他社がまだ使用していない素材を数年先行して使っています。

イタリアのブランドが時々発売する、とんでもない限定車。
DOGMA にもあります。

フレームのカラーがスペシャル、パーツもすごいし、分かるのですが400万円。。。
買える買えないは別として、ブランド価値を高める手法が、オーナーの趣味感覚がぶっ飛んでいて面白いです。
