
サイクリングを目的としたロードバイクのことで、体への負担を少なく長距離を無理なく走れるようになっています。対極にあるのが「レースバイク」でロードレースを走ることを目的に作られて、フレームが硬いので脚力が求められます。
マラソンのシューズに例えるとソールの硬いプロ向けと、柔らかめの一般ランナー向けがあることに似ています。
下の図でいくと、RACEがロードバイクのレースバイク、スピードトレーニング右側とジョギング左側はあたりがエンデュランスバイクになります。

※アシックスのサイトよりお借りしました
日本では「2:8」でレースバイクの方が売れています。
その要因としてはプロ選手がかっこよくレースで乗っているシーンを多く見かけることがあり、
レースに興味がない方でもレースバイクの方が速く走れそうだし見た目がかっこいいいこれに尽きるのではないかと思います。
では海外ではどうなんでしょう?
大手アメリカのブランドが公表したデータでは「7:3」とエンデュランスバイクの方が売れています。
正直私も驚きましたが自分なりにその要因を考えてみました。

私もフランスでロードレース活動を行っていたこともあり、老若男女がロードバイクに乗って楽しんでいる光景を目にしてきました。
小学校高学年くらいの子でロードレースに出てたことがある子は、クラスの半分はいるイメージでもちろん女子もいます。
街のスポーツクラブはサッカー、自転車、柔道この3つは必ずあるくらいポピュラーです。
日本の野球とほぼ同等のイメージを持って頂くと分かりやすいかもしれません。

その分母が大きいのでレースからサイクリングへ楽しみを移行する方が多いと思います。
私が住んでいたフランスでも40歳以下でロードバイクに乗っている人は乗る目的=レース、それ以上の人はサイクリング目的、40歳以上でもレースに出るごくわずかな人はマスターズで若い選手とは別カテゴリーになっていました。このあたりの年齢でロードバイクに乗る目的が「速さ」から、「楽しさ」に変わってくるのかもしれません。
エンデュランスバイクの方がスピードを出さなくてもふらつきにくいので、がむしゃらに漕ぐより周りの景色を楽しみながら走れ結果的に長距離を走れる。フレームの硬さも優しく筋肉への負担が減れば、膝や腰の痛みも出にくいので、無理なく乗れます。
日本にはレース文化がほとんどないので、初めてロードバイクに乗るのが大人になってからで、純粋に速くてかっこいいバイクに乗りたい方が多いのは当然のことかもしれません。
そういうエンデュランスバイクの良さはなかなか特集されないので、当店のYouTubeインプレッションで取り上げた3台を比較していきます。
BRIDGESTONE ANCHOR / RE8
日本のブランド。
レースモデルのRPシリーズの空力はそのままに、サイクリング向けの走りに作れたモデル。
日本の地形、日本人の体力を徹底して突き詰めた、まさに日本人のために作られ純和製バイク。

cervelo / CAREDONIA
カナダのブランド。
世界のトップチームがレースで使用するハイブランド。そのスタッフが自分たちがサイクリングで楽しめる、
最高のバイクを作りたいと作ったバイク。

FELT / VR 4.0 ADVANCED
アメリカを拠点に開発してきたブランドで、現在はオーストリア拠点。
ツールドフランスに出場するチームにも供給していたことがあるのですが、その他のシーンではトライアスロンに使う先進的なTTバイク、アメリカナショナルチームに採用されたトラックバイクなど、レースシーンでは強い支持を集めています。そんなブランドが作るこだわりぬいたエンデュランスバイク。

レースバイクの場合、ロードレースは集団で走るので平均時速40㎞/hあたりを想定した速度域でのパワーを想定した硬さになっています。
もし単独で平坦を20分頑張って走った際に平均40㎞/hは維持出来ないとレースバイクは硬いかもしれません。(空力は別として)
エンデュランスバイクの場合、平坦を20分頑張って走って平均30㎞/h前半くらいのイメージの方に合うフレームの硬さになっています。
つらけど踏み続けられるのが長くなる感じでしょうか。
その踏みやすさは下のレーダーチャートの「サイクリング向けの剛性か」というところに表記しています。
フレームを機械で測定して硬くても人間が乗ると踏みやすい物もありますし、柔らかくても足あたりが鈍く重い物もありますので、サイクリング向けで人間との親和性の良いものを高い点数にしています。

それでは順番にインプレッションしていきます。
BRIDGESTONE ANCHOR / RE8

スタイリングはエアロフレームそのもので、しっかり風洞実験も行っているとのことです。
今回紹介する3モデルの中で一番空力性能は高いと思います。
シートポストはあえてエアロ性能は追わず、丸形を採用し乗り心地をよくしているとのこと。
フレームサイズも海外のメーカーにはない身長140㎝後半から乗れるサイズもあり、フレーム三角も小さくまだぐ時に乗りやすい、シートポストの長さもで出るのでサドルバックがつけやすかったり、小さ目サイズでも見た目が悪くならないのは流石の作りこみ。


「平地加速 10点」
最大の特徴は「低速からの加速が速い」「ほんの少し踏むだけで押し出されるように加速する」
信号待ちから巡航速度へ乗せるまでの加速が一瞬、フレームの設計は完全にここにフォーカスを当てています。
他の人を走った時に信号待ちからの加速、一旦停止からの加速、少し勾配の変化があると登り口で少し遅れるなど経験されるかたもいらっしゃると思います。そんな瞬間に電動アシストがついた自転車なみに加速します、しかも軽くしか踏んでないのにです。
それから巡行していくとエアロ性能がよく失速感もありません。
「登りダンシング 6点」
弱点は速度変化に弱く、ダンシング(たち漕ぎ)のリズムがとりにくいのがマイナスです。
安定感を高めた半面、ダンシングをするとバイクが直立しようとする動きがでるためにぎくしゃくしがちです。
それはメーカーが意図した動きで、ダンシングをせずにシッティングを多用して走るサイクリスト向けに考えた動きなので、向き不向きがでます。信号待ちからの加速、登りでもダンシング苦手でほとんどしませんという方には、座ったまま加速してもスッと前へ引っ張れるように進むのでオススメです。
「乗り心地 7点」
エンデュランスバイクで大切な路面からの衝撃吸収性ですが、かなり硬い部類です。
試乗車のホイールが50㎜ハイトだったのもありますが、タイヤが30Cでもゴツゴツしますので、
リムハイトは35㎜~40㎜あたりの内幅が広いワイドリムで乗るともっとよくなると思います。
「重量 8点」
フレーム重量は1,010gあたりだと聞いていますが、ブリヂストンは塗装がしっかり塗ってあるのでカラーリングによって重くなりがちです。
乗り味に大きな差は生まれないので参考までに。
















cervelo / CALEDONIA

スタイリングは乗り心地を最優先して最低限のエアロ性能をもたせた感じ。
それでも後輪とフレームが近づく箇所はフレームが大胆にえぐられていて、太いタイヤを履いても空力性能を損なわない工夫もされています。
ブレーキケーブルはハンドル、ステム、フレームへと内装ではなく、あえての外装。
購入後にハンドル位置を変えたいときも、工賃もさほど掛からずに交換できます。
カラーリングの質感がいいのもサーヴェロの特徴で、なんとも言えず塗装が艶っぽく、見る角度や、天気によって雰囲気が変わるのがさすがハイブランド。


「乗り心地 10点」
最高点はほとんどの路面の衝撃を吸収する乗り心地。乗り心地がいいことは、こんなにも疲れないし楽しいんだと感じさせてくれます。
硬いゴムに乗っているような、低反発まくらのような、その心地よさに包まれる感じがします。
下りの段差も怖くないですし、一緒に走った方が段差でガチャーンと越えていても、このバイクからは音が出ないほど吸収してくれます。
「重量 7点」
サーヴェロは重量を公表していないので、全てばらしてフレームだけの重量を量らないと分からないのですが、想定すると1,200g~1,300gなのではないかと思います。
フレームのカーボンもがっちりしていて、転んでもそう簡単には割れそうにもないくらい頑丈です。
メーカー的は乗り心地や走りの安定感優先で作っているモデルで、もっと軽いのが欲しいのなら上位モデルのカレドニア5を選んで下さいといったところでしょう。
「登りシッティング 登りダンシング 8点」
なんとなく付けた8点に見えがちですが、重量が重いにも関わらずなぜか登りはグイグイ進みます。
軽いギアで漕いでも重いギアで漕いでも、力をに逃がさすグングン前に進みます、BB周辺の剛性が結構あります。
ダンシングに切り替えても、くせがなくリズミカルに出来るので、急がず淡々と登りもこなせる系です。
購入後に変速系を電動にしたり、ホイールを剛性が高くて軽いホイールへ替えていくと、実は大化けするモデルなのかもしれません。














FELT / VR 4.0 ADVANCED

フレーム重量900gの非常に軽量なモデル、後ろ半分はマットカラーで塗装重量も抑え、エンデュランスバイクも可能な限り軽くすることを徹底しています。
スタイリングはケーブルセミ内装で大胆なエアロではないものの、最新のトレンドのフロントフォーク上部が薄く前輪の中で起こる乱気流の抑制、サドル下付近も工夫が見て取れます。ハンドル周りはステムの下からケーブルを入れる構造で純正ステムには汎用のFSA社のものが採用されています。他メーカーでは非常に硬い専用ステムを使用して乗り味をかっちりさせるものが多い中で、FELTは汎用ステムで乗り味を作っている点が良いと思います。購入後にハンドルポジションを変更する場合も、必ずしも純正でなくても乗り味が損なわれない点がとても大切だと思います。


「サイクリング向けの剛性か 10点」
足あたりがとても良くフレームの剛性がしっかりあるのですが、踏むとスッとクランクが周り硬さを感じさせずに推進力に変わっていきます。
フレームは薄くてパリッとしたレースバイクと同じ感じがします、FELTは素材の公表がありませんので詳しくは分かりませんが、同時期に発売されたレースモデルFRと似たような素材にも感じます。
他2モデルと比べると明らかにすべての動きが軽くエンデュランスモデルだと感じるのは、ハンドル位置の高さくらい。
新しい乗り味なのかと言われると、準ロードバイクといった感じで今までロードバイクに乗ってこられた方が感じたことがある違和感のないものです。
他社のエンデュランスバイクではスペシャライズド ルーベ、トレック ドマーネ、キャノンデール シナプスと言ったトレンドを作っているアメリカ大手3社と同じ方向性で、ペダリングは優しくしてあるものの真剣に踏めばレースバイクと変わらない速さがあります。ブリヂストンRE8のような急加速に強いとか、そういった特筆すべきものはあえて作らず、すべてが高次元でナチュラルに走ります。
「登りダンシング 10点」
先にも書いた通り登りのダンシングも左右に振る動きが軽いです。
重量もフレームで900gと軽いのでヒルクライムに使用しても全く問題ないです。
「下り」
エンデュランスバイクは路面に吸い付くように安定した走行感がありますので、今回のレーダーチャートには下りの項目を設けませんでした。
この3モデルの中では一番動きが俊敏なので下りが苦手な方にとってVRは、少し腰高感があってカーブを狙ったラインにもっていくのが難しいと感じるかもしれません。このスパッと曲がる動きはレースバイクそのものなので、とても気持ちが良いと思います。



















シマノ105機械式ワイヤー変速モデル完成車 R7120
ブリヂストン RE8 / ¥379,800
cervelo カレドニア / ¥495,000
FELT VR 4.0 ADVANCED / ¥495,000
ブリヂストンが特別安いのはスペックが劣るということではなく、今の日本の経済状況を考えて限界まで安くしているからです。
日本のブランドですが量産は海外で生産していますので、為替の影響も受けますし、こういう時だからそこ日本のブランドの良さに触れて下さいといったところでしょうか。
カレドニアとVRは同じ価格ですがパール構成で差がかなりあります、カレドニアは中空ではない重いクランクにアルミシートポスト、VRの方が105中空クランクにカーボンシートプストになっていますので5万円ほどの差があります。※ちなみにカレドニアは現在セールで¥445,000になっていますので、5万円安くなっています。








シマノ105Di2電動変速のモデル完成車 R7170
ブリヂストン RE8 / ¥489,000
(ホイール DTSWISS 1800 1,667g アルミ)
cervelo カレドニア / ¥698,000
(ホイール Fulcrum Racing 900 1,880g アルミ ¥24,600)
cervelo カレドニア / ¥693,000 変速機SRAM RIVAL ETAP 仕様
(ホイール Fulcrum Racing 900 1,880g アルミ ¥24,600)
FELT VR 4.0 ADVANCED / ¥792,000
(ホイール Reynolds AR46 DB 1,600g カーボン ¥248,000)
ブリヂストンRE8は50万円を切る価格設定で、他社の105ワイヤー完成車と同価格になるほど安い。
数年先に発売されたレースモデルRPシリーズと同じ形状にして、開発コストを抑えている点も価格に反映しているかもしれません。
そう考えるとカレドニアは装備されるホイールのグレードが低いのですが、かなり高めの価格設定です。
カレドニアにはSRAM RIVAL仕様がありシマノ105電動と同等グレードのコンポです。スラムで乗ってみたい方には選択肢としてありです。
VRだけ唯一カーボンホイール標準装備なので高いですが、もしアルミホイール装備だと想定すると57万円くらいの価格になりますので、他社と同等くらいで見て頂くといいかと思います。
ちなみにレイノルズのホイールは、比較的柔らかめの乗り味でVRとのマッチングはかなり良かったです。リムハイトも46㎜で高すぎず低すぎず、さすがメーカーが考えて標準採用しているグレードだと思います。重量こそ1,600gですが、フレームとのマッチングがいいので特に重いとか、ネガティブな印象はありませんでした。
唯一気になるのはフロントハブにガタが出やすいので専門店でしっかりチューニングする必要があります。






シマノ アルテグラDi2電動変速のモデル完成車 R8150
ブリヂストン RE8 / ¥935,000
(ホイール DTSWISS 1400 45 1,528g カーボン ¥316,800)
FELT VR 4.0 ADVANCED / ¥990,000
(ホイール Reynolds AR46 DB 1,600g カーボン ¥248,000)
RE8はホイールがRE8の方が価格で高いものが装備されてますが、価格よりもフレームとの相性をよく考えて選ばれていると思います。
フレームが硬いRE8に硬いDTのカーボンホイール、しなやかなVRにしなやかなレイノルズが選ばれています。
ハンドル周りはRE8は重くなりますがステムハンドル別体型、VRは軽くて剛性のある一体型カーボンハンドルを装備。
完成車重量はRE8が7.4kg、VRは公表されていませんがパーツから想定すると7.1kgあたりではないでしょうか、相当軽いです。




今回取り上げたモデルのYouTubeインプレッションです